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EU炭素国境調整措置(CBAM)のよくあるご質問(FAQ)        2026年10月1日時点

作成者: 植村哲士|2026/09/30 1:38:52

Booost株式会社が主催するセミナー等を通じて多くの方からいただいたご質問について、2026年8月に公表されたガイダンス類にもとづいて回答を作成しました。以下の回答は2026年10月1日時点のものです。EUから公表される資料に基づき適宜更新予定です。
※Booost、EU CBAM 対応説明会を2025年12月25日に開催 | Booost株式会社のプレスリリース

Q1. CBAMの初回の年次申告は、いつの実績をいつ提出するのですか?

A. 初回の年次申告は、2026年1月1日から12月31日までにEUへ輸入された対象品の数量・体化排出量等について、EU側の認定CBAM申告者が、2027年9月30日までに提出します。

CBAM証書の販売は2027年2月1日から開始されます。認定CBAM申告者は、2026年の輸入分に対応する必要数の証書を購入し、2027年9月30日までに償却します。証書の購入と年次申告・償却は、必ずしも同時に行うものではありません。

Q2. 2026年中は年次申告やCBAM証書の購入が不要であれば、CBAMレジストリへの登録も不要ではないでしょうか?

A. いいえ。年次申告と証書購入が2027年からであっても、免除対象を除き、EUへの輸入には認定CBAM申告者としての認可が必要です。

EU側の輸入者または該当する間接通関代理人が認可を受け、輸入時の通関申告には、原則としてCBAM口座番号を記載します。単にレジストリへ登録するだけでは足りません。年間50トン以下の免除が適用される場合は、通関申告で免除を示します。

なお、日本などEU域外の製造事業者によるCBAMレジストリへの登録は任意です。EU側の申告者の認可と、製造事業者の登録は区別する必要があります。

Q3. 年間50トン以下の免除基準は、企業単位ですか、製品単位ですか?

A. EU側の輸入者単位です。同じ輸入者が同じ暦年に輸入した、鉄鋼・アルミニウム・セメント・肥料のCBAM対象品の正味重量を、CNコードをまたいで合計します。

合計が年間50トン以下であれば、この免除が適用されます。製品単位や日本の製造事業者単位ではありません。また、電力と水素には、この重量による免除は適用されません。

年の途中で50トンを超えた場合には、超過分だけでなく、その年の対象輸入全体についてCBAM義務が適用されます。

Q4. EUへ直接輸出しておらず、国内の商社やメーカーに納入している場合でも、CBAM対応は必要ですか?

A. 直接輸出しているかどうかだけでは判断できません。自社製品がCBAM対象品としてEUへ輸入される場合や、別のCBAM対象品の前駆体として使用される場合には、納入先からCBAM用データの提供を求められることがあります。

その製品について実データに基づく値を使用する場合には、製造施設の操業者が制度に適合した算定・報告書作成・第三者検証を行う必要があります。

一方、EU側の申告者が最終製品のデフォルト値で申告する場合には、その体化排出量について自社の第三者検証は不要です。まず、納入先に、EUへ輸入される品目のCNコードと、予定する申告方法を確認してください。

Q5. 自社のねじ・ボルトが自動車や機械に組み込まれてEUへ輸出される場合も、CBAMの対象になりますか?

A. EUへ輸入される完成品のCNコードによって判断します。

ねじ・ボルトが単独の対象品として輸入される場合と、完成品に組み込まれた状態で輸入される場合は区別する必要があります。完成品のCNコードがCBAM対象外であれば、対象品のねじ・ボルトを含むことだけを理由に、その完成品がCBAM対象になるわけではありません。

ただし、自社製品が別のCBAM対象品の前駆体として使われる場合には、下流の算定に必要なデータを求められることがあります。

Q6. 2028年のCBAM対象拡大に向けて、何を準備すればよいですか?

A. 対象拡大に関する提案と、採択済みの適用法令を区別して確認する必要があります。鉄鋼・アルミニウムを多く含む川下製品への対象拡大が提案されていますが、自社製品の対象可否や適用日は、最終的な法令で判断します。

準備として、EUへ輸入される製品のCNコード、製造施設、使用する鉄鋼・アルミニウムの種類・数量、主要な供給元を整理してください。そのうえで、提案されている対象品目との照合、供給者からのデータ取得可能性、算定・検証に必要な体制と費用を確認します。

「2028年から全ての完成品が対象になる」と一律に判断せず、自社に関係する品目と法案の進捗を継続的に確認することが必要です。

Q7. 実データに基づく値とデフォルト値のどちらを使うかは、誰が決めるのですか?

A. EUへの年次申告に使用する値については、EU側の認定CBAM申告者が責任を負います。実データに基づく値を使用する場合には、製造施設の操業者(Installation Operator)による制度に適合した算定と、認定検証機関による検証が必要です。

ここでは、最終製品そのもののデフォルト値で申告する場合と、Installation Operatorが前駆体のデフォルト値を使って最終製品を算定する場合を区別する必要があります。

前駆体の検証済み実データが得られない場合には、Installation Operatorが、その前駆体のデフォルト値に該当年のマークアップを適用し、加重平均や実際の消費量・収率等を反映して最終製品の体化排出量を算定します。EU側の申告者は、この検証済み算定結果を申告に使用します。

Q8. 実データに基づく値とデフォルト値は、どのような基準で選べばよいですか?

A. EU側の申告者の希望と、必要なデータ・検証の確保可能性を確認したうえで、証書費用と算定・検証費用を比較します。

多品種・少量で算定・検証の負担が大きい場合や、実データに基づく算定結果がデフォルト値を上回る場合には、最終製品のデフォルト値を使用する方が経済的になることがあります。

一方、電炉材など実データによる排出量が低い場合、デフォルト値が高い場合、輸出量が多く証書費用への影響が大きい場合、顧客から検証済みデータを求められる場合には、実データの利用を検討する意義があります。

これらは実務上の判断例であり、輸出量などによる法定の選択基準ではありません。マークアップ、無償割当調整、適用可能な炭素価格控除、算定・検証費用、費用分担を反映して個別に判断してください。

Booostでは、CBAM証書数を計算するExcelファイルを無償で提供しています(2026年第1四半期のCBAM証明書炭素価格公表に伴いCBAM証明書購入額試算ファイルを更新しました)。こちらを活用し、実データを用いたほうが良いか、デフォルト値を用いた方が良いかを検討ください。

Q9. 生産量が少なく、人手や費用をかけられない場合、デフォルト値を使用できますか?

A. EU側の認定CBAM申告者は、最終製品のデフォルト値を使用して申告できます。この方法であれば、その体化排出量について製造施設の第三者検証は不要です。

ただし、Installation Operatorが前駆体のデフォルト値を使い、実際の消費量・生産量・収率等に基づいて最終製品の体化排出量を算定する場合には、第三者検証が必要です。この場合、Installation Operatorが前駆体のデフォルト値にマークアップを適用します。

また、年間50トン以下の免除は、EU側の輸入者の対象輸入量で判断します。日本の製造事業者の生産量や輸出量が少ないことだけでは、免除の適用を判断できません。

Q10. デフォルト値を使う場合、どの国・どの年の値を適用するのですか?

A. 最終製品そのもののデフォルト値で申告する場合は、製品のCNコード、EUの非特恵原産地規則に基づく原産国、輸入年に対応する値を使用します。「CNコードが確定した国」や「最後に加工した工場の所在国」だけで一律に決めることはできません。

一方、Installation Operatorが購入した前駆体にデフォルト値を使用する場合は、その前駆体のCNコード、生産国、適用される報告期間に対応する値とマークアップを使用します。

前駆体の報告期間は、原則として、それを使用した最終製品の生産年です。前駆体の実際の生産年を特定できる十分な証拠がある場合には、制度の要件に従って、その生産年を使用します。2026年の輸入分については、前駆体にも2026年の値とマークアップを適用します。

該当国の表に値がない場合は「その他の国・地域」の値を、前駆体の生産国が不明な場合はデフォルト値規則の附属書IVの値を使用します。

Q11以降では、マークアップや無償割当調整、第三者検証、算定対象となる工程、モニタリング計画、必要なデータ・証憑、検証スケジュールなど、CBAM対応を実務で進める際の論点をさらに詳しく解説します。

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