本記事は、Scope3/サプライチェーン排出量を体系的に整理するシリーズの【実務編】として、サプライヤーエンゲージメントの進め方を整理する記事です。
Scope3算定を進める中で、サプライヤーとの連携(サプライヤーエンゲージメント)が次の論点として浮上する企業は少なくありません。
一方で、
が整理されないまま、対応に悩むケースも多く見られます。
本記事では、Scope3算定におけるサプライヤーエンゲージメントを「実務の進め方(How)」に限定して整理します。そのため、Scope3の定義や全体像ではなく、「実際にどのように進めるか」に焦点を当てて解説します。
※サプライヤーエンゲージメントを*なぜ必要とするのか/算定全体の中でどう位置づけるのか、*といった考え方については、こちらの記事で解説しています。
→ 【設計編】Scope3算定をどう設計するか~排出削減の取り組みと算定結果を結びつける考え方
Scope3におけるサプライヤーエンゲージメントとは、自社の調達先・取引先と対話・連携しながら、温室効果ガス(GHG)排出量の把握や削減に取り組むことを指します。重要なのは、単なる排出量データの提出を求める取り組みではないという点です。
実務上は、
といった、中長期的な関係構築を含みます。
なお、「サプライヤーエンゲージメント」という言葉は、人権や調達方針、品質管理など、Scope3以外の文脈でも用いられますが、本記事ではScope3算定・排出削減に関わる取り組みに限定して扱います。
※本記事の前提となる算定設計については、以下の記事をご参照ください。
→ 【設計編】Scope3算定をどう設計するか~排出削減の取り組みと算定結果を結びつける考え方
※また、Scope3の全体像から確認したい方は以下をご覧ください。
→ 【What編】Scope3とは?算定対象・15カテゴリをわかりやすく解説
Scope3の中でも、多くの企業で排出量が大きくなるのがカテゴリ1(購入した製品・サービス) です。
このカテゴリでは、
という特徴があります。
その結果、
といった課題が顕在化し、サプライヤーとの連携が実務的な次の一手として検討されます。
※Scope3算定がなぜ難しいのかという背景については、こちらの記事で整理しています。
→ 【Why編】Scope3算定はなぜ難しいのか 〜有価証券報告書・SSBJ開示で説明が難しくなる理由
Scope3実務では、「まずサプライヤーからデータを集めるべき」と考えられがちですが、多くの企業では、まず全体像を把握したうえで重点領域を整理し、その後にサプライヤー連携へ進みます。実務でよくある誤解が、「Scope3算定=サプライヤーからデータを集めること」という理解です。
多くの企業では、次のような流れを踏んでいます。
サプライヤーエンゲージメントは、この後に検討される実務です。なお、これらの施策は、全体設計と一体で考えることが重要です。
※Scope3算定設計については、以下の記事をご参照ください。
→ 【設計編】Scope3算定をどう設計するか~排出削減の取り組みと算定結果を結びつける考え方
ここまで見てきたように、サプライヤーエンゲージメントは、単にデータを収集するための取り組みではなく、Scope3算定結果と排出削減の取り組みとを結びつけるための重要な実務です。
では実際に、
といった実務は、どのように進めればよいのでしょうか。
これらの具体的な進め方については、次章以降で詳しく解説しています。
すべてのサプライヤーを一律に対象とする必要はありません。
といった観点で、対象を段階的に整理することが現実的です。
サプライヤーに対しては、
を明確に伝えることが重要です。
排出量データの提出だけを目的にすると、双方にとって負担が大きくなり、継続性を損ないます。
初期段階から、製品単位の詳細なCFPや高精度な一次データを必ずしも求める必要はありません。
まずは、
といった定性的な情報も含めて整理することが有効です。
サプライヤーから得た情報は、
と結びつけて初めて意味を持ちます。
どの論点で使う情報なのかを意識しながら整理することが重要です。
サプライヤーエンゲージメントを進める中で、「サプライヤーから提供された排出量データを、 カテゴリ1の算定にどのように使うべきか」という実務的な論点が浮かび上がります。
将来的に算定結果を社内外へ説明していくことを考えると、その扱い方をあらかじめ整理しておくことが重要になります。
現時点では、GHGプロトコル、SSBJ基準、保証業務に関する国際基準(ISSA 5000 等)のいずれにおいても、サプライヤーから提供されたデータをScope3(カテゴリ1)の算定に用いること自体が一律に否定されているわけではありません。
実務上重視されるのは、
といった、算定プロセスの透明性と一貫性です。
そのため、
といった形で、第三者保証を担う機関と相談しつつ、段階的にサプライヤーデータを活用していく企業が多いようです。
サプライヤーエンゲージメントは、段階的に深めていく取り組みであり、算定高度化そのものを目的にするべきではありません。
※その前提となる考え方(設計)については、こちらの記事で整理しています。
→ 【設計編】Scope3算定をどう設計するか~排出削減の取り組みと算定結果を結びつける考え方
Scope3算定におけるサプライヤーエンゲージメントは、単なるデータ収集ではありません。
算定結果と排出削減の取り組みを結びつけ、将来の説明や第三者保証も見据えた実務上の重要な手段です。
一方で、初期段階から保証を過度に意識しすぎると、実務が前に進まなくなるリスクもあるため、算定フェーズに応じた現実的な対応を積み重ねることが重要です。
サプライヤーエンゲージメントは、Scope3算定の「次の論点」であり、設計を実際の運用へ落とし込むための実務フェーズといえます。
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