2026年10月13日時点
EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)について、鉄鋼・アルミニウムを使用する下流製品への対象拡大が進められています。欧州委員会は2028年1月1日からの適用を提案し、欧州議会は2026年9月15日に、委員会案より広い範囲の製品を対象とする修正案を採択しました。ただし、対象品目の追加が法的に確定したわけではありません。今後、欧州議会とEU理事会が最終的な対象範囲や適用条件を調整し、正式な法改正を行います。
今回の対象拡大は、鉄鋼・アルミニウム等の素材に加え、それらを使用して製造する部品や完成品にもCBAMを適用しようとするものです。
背景には、素材段階で炭素コストを負担するEU域内の製造業と、CBAMの対象外となっている下流製品をEUへ輸出する域外の製造業との競争条件の違いがあります。素材の輸入にはCBAMが適用されても、その素材を使った完成品の輸入が対象外であれば、生産や排出が域外の下流工程へ移るリスクが残ります。対象拡大は、こうしたバリューチェーン上の炭素リーケージに対応するための措置です。
欧州委員会は2025年12月17日、選定した鉄鋼・アルミニウム集約型の下流製品を追加する改正案を提出しました。これに対し、欧州議会は2026年9月15日、対象をさらに広げる修正案を採択しています。
議会修正案には、鉄鋼製品のCN第73類のほか、エンジン部品、液体用ポンプ、冷蔵・冷凍機器、軸受、変圧器、鉄道車両部品、貨物自動車、トレーラー等のコードが記載されています。また、医療機器、家具、プレハブ建築物等に関する細分コードも追加されています。鉄鋼・アルミニウムの素材メーカーに加え、それらを使用する幅広い製造業が、対象となる可能性を確認する必要があります。
対象の確認には、製品名だけでなく、EUの関税分類であるCNコードと品名の条件を照合することが必要です。上位コードで対象を指定する場合と、細分コードで限定する場合では、対象範囲が異なります。また、「ex」が付いたコードでは、そのコードに属する製品の一部だけが対象となります。
EU理事会は2026年6月12日に交渉方針を決定し、2026年末までの合意を目標としています。欧州議会も9月15日に修正案を採択し、機関間交渉のため担当委員会に差し戻しました。現在は、各機関の案を最終的な法令にまとめるための調整段階です。
今後は、欧州議会・EU理事会・欧州委員会による三者協議等を通じて合意案を調整し、欧州議会と理事会が同一の法令文を正式に採択します。その後、EU官報に掲載され、改正規則に定められた日から適用されます。
委員会案が示す対象拡大の適用開始日は、2028年1月1日です。ただし、2026年末は合意の目標であり、確定期限ではありません。追加対象のCNコード、対象範囲、適用開始日は、最終的に採択される規則で確認する必要があります。
企業の準備としては、まずEU向けに輸出する製品のCNコードを整理し、委員会案・議会修正案との照合によって、追加対象となる可能性のある製品を把握することが考えられます。
その上で、対象候補の製品について、製造拠点、使用する鉄鋼・アルミニウム等の調達先、排出量データの保有状況を確認し、EU顧客やサプライヤーとの情報連携を検討しておくことが有効です。最終的な対象範囲が確定した際に対応を進められるよう、品目確認とデータ収集体制の整備を並行して進めることをお勧めします。
Booostでは、EU CBAMの規制動向を踏まえ、対象品目の確認から排出量算定、サプライチェーンとのデータ連携、第三者検証への対応まで、企業の実務に即した対応を支援しています。対象品目拡大への準備について、ぜひご相談ください。
CBAMの制度全体や、実データ報告・第三者検証の具体的な実務については、以下の記事もあわせてご覧ください。
欧州委員会案と欧州議会修正案における対象品目の違いを、CNコード別に比較したExcel資料をご用意しました。
自社製品が追加対象となる可能性を確認する際に、ぜひご活用ください。
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※本資料は2026年10月13日時点の検討状況に基づいています。対象品目は今後変更される可能性があります。