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一般消費者等向けの越境ECで「遠隔販売の輸入者」となる第三国事業者へのCBAM義務の拡大案

作成者: 植村哲士|2026/10/14 0:24:39

2026年9月15日に欧州議会が採択したEU CBAMの改正修正案には、一般消費者等向けの越境ECに関する規定が盛り込まれています。「遠隔販売の輸入者」を認定CBAM申告者の認定申請対象に追加するとともに、少量免除の閾値を暦年の対象物品の合計正味質量で判定し、個々の取引が閾値を下回る場合にも合計価額・数量の報告を求める内容です。

遠隔販売の輸入者には、商品を販売する事業者だけでなく、販売を仲介するECプラットフォーム運営者も含まれます。日本などの第三国に所在する事業者・プラットフォーム運営者も、遠隔販売の輸入者となる場合には認定申請の対象となる規定です。本稿では、欧州議会が採択した修正案に基づき、対象者と追加規制の内容を整理します。以下は改正案の説明であり、既に適用されている義務として扱うものではありません。

遠隔販売とは何か 対象となる取引と事業者

遠隔販売の定義

修正案でいう「遠隔販売」は、VAT指令2006/112/EC第14条第4項第2号に定義される、第三国又は第三地域から輸入される物品の遠隔販売を指します。売主自身又は売主のために、EU域外からEU加盟国の購入者へ商品を発送・輸送する取引であり、売主が間接的に配送に関与する場合も含まれます。インターネットで注文すること自体は、定義の必須条件ではありません。

購入者には、一般消費者等の非課税者に加え、同指令第3条第1項によりEU域内取得がVAT課税対象とならない一定の事業者・法人も含まれます。

個人事業主と通常のB2B取引の扱い

EU側の購入者が一人親方などの個人事業主である場合、個人名義で購入するという理由だけで遠隔販売に該当するわけではありません。VAT指令は、独立して経済活動を行う者を「課税事業者」と定義しており、法人に限定していません。

通常のVAT課税事業者として事業用に購入する場合と、遠隔販売の定義に含まれる特例的なVAT上の取扱いを受ける場合とを区別する必要があります。判断の基準は、法人か個人かではなく、購入者のVAT上の区分と取引条件です。

通常のVAT課税事業者であるEU企業が輸入者となり、日本企業から事業用の商品を購入するB2B取引は、オンラインで注文したという理由だけで遠隔販売には該当しません。今回の遠隔販売に関する修正は、そのような取引について日本の売主を一律に認定CBAM申告者とするものではありません。CBAM上の輸入者・申告者に関する従来の枠組みで扱われます。ただし、一定の事業者・法人は遠隔販売の購入者要件に含まれるため、B2Bであればすべて対象外ということではありません。

ECプラットフォーム運営者も輸入者になり得る

新EU関税法典の第5条第14号は、「遠隔販売の輸入者」を、遠隔販売で商品を供給する者又は遠隔販売を仲介する者と定義しています。前文63は、取決めに応じて、売主又は仲介者のいずれかが輸入者となると説明しています。したがって、プラットフォーム経由の販売について、出店者が常に輸入者となるわけではありません。

欧州議会のCBAM修正案は、この遠隔販売の輸入者を認定申請の対象に追加しています。遠隔販売の輸入者についてEU域内に設立されていることを限定条件としていないため、第三国に所在するプラットフォーム運営者も、遠隔販売の輸入者となる場合には認定申請の対象となる規定です。

前文40aでは、遠隔販売の輸入者又は該当する場合の指定代理人が認定CBAM申告者の地位を引き受け、年間に仲介した対象物品の輸入を合算して申告し、対応するCBAM証書を償却する責任を負うべきとしています。この場合、輸入者となるのは最終消費者ではありません。

具体的な追加規制の内容

認定CBAM申告者の認定申請対象の追加

修正45は、第5条第1項の認定申請対象に「遠隔販売の輸入者」を追加しています。対象者は、EU関税領域に物品を輸入する前に、認定CBAM申告者の地位を申請するものとされています。

修正46では、EU域外の輸入者について間接税関代理人が認定CBAM申告者の地位を取得する規定も変更し、「遠隔販売の輸入者ではない場合」を区別しています。認定申請対象の追加と、少量免除によって免除される義務の範囲は、分けて確認する必要があります。

閾値を暦年の合計正味質量で判定

修正37は、遠隔販売の輸入者について、少量免除の質量基準閾値を、当該暦年に輸入された附属書I対象物品の合計正味質量に適用するとしています。最終消費者が輸入する個々の貨物の数にかかわらず、年間の数量を合算する規定です。

ねじ・ボルトなどの鉄鋼製品に関係する50tの閾値についても、個々の購入者や配送単位ごとに判定する仕組みではありません。この修正は閾値の撤廃ではなく、遠隔販売の輸入者について年間合算による判定を明記するものです。

閾値を下回る個々の取引も含めた価額・数量の報告

修正65で新設される第25b条第2項は、遠隔販売の輸入者又は指定代理人に対し、遠隔販売取引を通じて仲介したCBAM対象物品の合計価額及び数量を、登録先加盟国の管轄当局に報告するよう要求する規定です。

個々の取引が少量免除の閾値を下回るか否かにかかわらず報告を求めているため、少量の個別取引も報告対象に含まれます。報告するのはCBAM対象物品の合計価額・数量であり、第三国事業者のEU向け輸出全体ではありません。また、この条文には報告頻度や提出期限は明記されていません。

人為的な取引分割等への監視と遡及的な責任

新設第25b条は、少量免除の閾値を下回ることを目的とした人為的な取引分割などを検出するため、欧州委員会が遠隔販売経由の輸入を監視するとしています。管轄当局が迂回を疑う合理的な理由を有する場合は、欧州委員会及び関連加盟国の税関当局に通知します。

迂回が確認された場合、遠隔販売の輸入者又は指定代理人は、迂回が特定された暦年の初日から遡及して認定CBAM申告者の地位を引き受けたものとみなされます。その期間に仲介した輸入全体について、対応するCBAM証書の責任を負うとされています。

※遠隔販売の定義からは、VAT指令上の「新しい輸送手段」と、売主又はその代理人が組立て・据付けを行って供給する商品が除かれます。前者は一定の条件を満たす自動車等・船舶・航空機を指し、後者は商品供給に売主側の組立て・据付けが伴う取引を指します。

以上の修正案は、ねじ・ボルトなどのCBAM対象製品の越境EC事業者に対して、購入者のVAT区分の確認を要求するものであり、CBAM対象製品の年間の販売量が50tを越えた場合は、越境ECのプラットフォーマーがCBAM申告の義務を負うことになります。自社がこのケースに該当しないかの確認が必要です。

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