SSBJ基準を読み、現行開示とのギャップを洗い出し、関係部門へ説明する。対応を始めた企業では、すでにこうした準備が進んでいます。
SSBJ対応は、サステナビリティ課題の財務影響を捉え、経営判断へつなげる取り組みだ――考え方としては理解していても、実務を一段進めようとすると、別の問いが立ち上がります。リスク・機会の重要性は誰が判断するのか。財務部門には、いつ、何を相談するのか。既存の経営会議やリスク管理へ、どう接続するのか。データが集まったとして、その作成過程を説明できるのか。
2026年8月26日に開催したSSBJ分科会第2期の第3回では、Booost株式会社 ドメインエキスパート部 シニアエキスパートの加藤祥子が、「企業価値向上に向けた実効性のある推進体制」をテーマに解説しました。
参加11社のうち6社は、すでにSSBJ対応プロジェクトを立ち上げていました。一方、プロジェクトを「立ち上げた」ことと、実効的に「動いている」ことは同じではありません。社内実装を考えるうえで、特に三つの問いが浮かび上がります。
01 「誰がプロジェクトを持つか」だけでなく、誰が何を判断するのか
サステナビリティ部門が事務局を担うことは自然です。しかし、事務局責任と判断責任が同部門に集中すると、実質的な意思決定が進まなくなります。重要性、事業・財務への影響、初年度の対象範囲など、論点ごとに「誰が判断するのか」を明確にする必要があります。
02 既存のTCFDや統合報告書があっても、なぜ再設計が必要なのか
開示文や数値がすでにあっても、報告範囲、証跡、レビュー、承認、財務諸表との接続まで説明できるとは限りません。参加者からも、既存マテリアリティを見直す過程で、判断根拠や保証に耐え得る記録が十分に残っていないという課題が共有されました。
03 全社を巻き込む前に、どこまで小さく始めるべきか
初年度から全社・全テーマを100点にしようとすれば、負荷が膨らみ、対応が止まりやすくなります。一方、経過措置を理由に先送りすれば、課題が翌年度へ集中します。重要な論点を使って一度プロセスを回し、自社固有の詰まりを見つける進め方が議論されました。
SSBJ分科会は、Booost株式会社が主催する、時価総額5,000億円以上の企業の実務担当者を対象とした全6回の実践型プログラムです。2026年6月から、講師による解説に加え、参加企業同士のディスカッションや各社の課題共有を通じて、SSBJ対応における実務上の判断や進め方を検討しています。
第3回では、Booost株式会社 ドメインエキスパート部 シニアエキスパートの加藤祥子が、「企業価値向上に向けた実効性のある推進体制」をテーマに、SSBJ対応を社内で前へ進めるために、誰を何のために巻き込み、何を判断してもらうのか、またその判断を既存の意思決定プロセスへどう組み込むのかを取り上げました。
ボストン大学 国際関係大学院 修士課程修了。 大手企業や外資系コンサルティングファームでサステナビリティプロジェクトの戦略設計や実行をリード。
25年のキャリアを持ち、コンプライアンス、人権、環境課題、品質マネジメントなど幅広いテーマに対応。 Booostには2025年5月に入社。ドメインエキスパートとして、クライアント企業の価値向上を支援している。
第1回では、SSBJ対応を単なる開示作業ではなく経営課題として捉える視点を確認しました。第2回では、社会・環境の論点を事業戦略、マテリアリティ、財務的影響へどうつなぐかを掘り下げました。第3回は、その理解を社内の意思決定と業務へ落とす「実装」の回です。