EU理事会は、企業の競争力強化を目的として、サステナビリティ報告およびサプライチェーン・デューディリジェンスに関する規制の簡素化を正式に承認しました。
今回の改正は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)と企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CS3D)を対象としており、報告負担の軽減や規制の適用範囲の見直しが行われます。
この改正は、EUが進める「Omnibus I」と呼ばれる規制簡素化パッケージの一環であり、企業活動を阻害する過度な規制を見直し、EU経済の競争力を高めることを目的としています。
キプロスのマリレナ・ラオウナ欧州問題担当副大臣は、今回の決定について次のように述べています。
「今回のパッケージは、企業にとって不必要で過度な負担を削減し、よりシンプルで合理的なルールを導入するものです。競争力の高い欧州連合の実現に向けた重要な一歩です。」
今回の改正により、CSRDの適用対象企業は大幅に見直されました。
主な変更点は以下のとおりです。
また、2024年度から報告義務が始まる予定だった企業のうち、2025年・2026年に対象外となる企業については移行措置として報告義務を免除することも決定されました。
さらに、一部の金融持株会社については連結報告義務の免除も導入されます。
サプライチェーンの人権・環境リスク管理を義務づけるCS3Dについても、適用範囲が見直されました。
新たな対象基準は以下のとおりです。
EUは、こうした巨大企業がサプライチェーン全体に最も大きな影響力を持つと考えており、デューディリジェンス義務は主にこれらの企業に集中させる方針です。
また、企業がサプライチェーンのリスクを評価する際には、
することが認められ、中小企業への情報要求が過度に広がる「トリクルダウン効果」の抑制が図られます。
さらに、当初の指令案に含まれていた
気候変動対策のトランジション計画策定義務
は削除されました。
今回の改正では、企業がルールを遵守しない場合の罰則についても見直しが行われました。
主な内容は以下のとおりです。
また、CS3Dのスケジュールも変更され、
に延期されました。
今回の法改正は、EU官報に掲載された後、20日後に正式発効します。
加盟国は原則として、発効から1年以内に国内法へ反映する必要があります。
今回の改正は、EUが進める規制改革の流れの一環です。
2024年10月、欧州理事会は
などで指摘されたEU競争力の課題を踏まえ、規制簡素化の推進を求めました。
さらに2024年11月の「ブダペスト宣言」では、
企業規制の抜本的な簡素化(simplification revolution)
を掲げ、中小企業を中心とした規制負担の大幅削減を目指しています。
こうした流れを受け、欧州委員会は2025年2月に「Omnibus I」パッケージを提案し、今回の改正に至りました。
EU理事会は、企業の競争力強化を目的として、CSRDおよびCS3Dの規制を大幅に簡素化しました。適用対象企業の縮小や報告義務の軽減により、企業負担を減らしながらもサステナビリティ政策の実効性を維持することが狙いです。今後は加盟国による国内法化が進み、2029年から新制度が本格的に適用される予定です。